「そうか、水沢さんて言うんですね・・・・・・この前は、どうも、ありが・・・・」
「さよなら♪」
と、水沢さんの歯が光ったかと思ったら、ぬいぐるみを持って、窓から飛び降りていった
「あ!!な、なんで逃げるのよ!?」
あ〜る子さんが、窓の際に駆け寄る、しかし、どうやら見失ったらしい・・・・しかし、窓から逃げるのが
好きな人だ(^^;、やれやれという感じで、お茶を入れてきてくれた、先輩
「で、何か用だったの?」

ここで、水沢さんを追いかけてきたなんて俺には言えない、なんて言おう・・・
「いや、あのくまに一言お礼が言いたかっただけなんですけどね・・・あ、お茶いただきますね」
あ〜る子さんが、ずばずばと話しを進めて、お茶をすする、うーん、ぱわふるだ
「・・・なんだ、また、てっきり僕の話しでも聞きに来たかと思ったよ」
先輩が、ふいーっと胸をなで下ろす・・・・・・・そうだな、今なら、証人も多くなるし、続きを聞いておくか
「先輩・・・・・・・・・・本当に、さり先輩知らなかったですよ」

俺が話しを切り出した、笑顔をたたえたままの、先輩
「そうか・・・・・」
「さり先輩は、大学志望だそうです・・・・・・・・・・」
「ふぅん・・・・・」
「いいんですか?・・・・・・」
俺が、問いつめるようにくろねこ先輩に話しを一方的につきつける、尋問してるみたいだ
まなは、煎餅を一生懸命ぱりぱり食べていて、参加する意志はなさそうだが、もう一人が過敏な反応を見せた

「何?・・・・なんかあったの?」
「進路のコトだよ、あ〜る子くん」
「進路・・・・そうか、卒業か・・・・先輩どうするの?」
なるほどと頷きながら、くろねこ先輩に聞くあ〜る子さん
「ロシアに行くんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・ろしあ?・・・・なに?あの、寒い国?」
どうやら、ロシアに対する知識は、俺と大差がないらしい(−−;

「ふーん、先輩、さり姉どうすんの?」
あ〜る子さんが、ずけずけと俺の聞いて欲しい所を聞いてくれる
「さりは、なんか大学へ行くって・・・」
「いや、それは、今わーふさんが言ってたじゃん、そうでなくて、先輩どうすんの?付き合ってんじゃないの?」
ずばずばと、隠し事一つない言葉で先輩をまくしたてる、うーん、困ってるぞ、くろねこ先輩(^^;
「あのね・・・・・」
「付き合ってないって、いっつも言うけど、付き合ってないにして、先輩の気持ちはどうなの?なに?嫌いなの?」
あ〜る子さん怖い(−−;

「・・・・・・・・・・・・嫌いじゃないさ、嫌いだったら一緒にいないもの」
「じゃ、好きなのね?」
「・・・・それもちょっと違うな・・・・ともかく、さりと僕はなんにもないよ、今までもこれからも」
くろねこ先輩が話しを切り上げにかかる

「・・・・・・・・・・ま、いいや、明日さり姉に直接聞くよ」
ずずーーっと、そう言ってお茶を一気に飲み干して、さくさくと出ていった・・・・風のようだ(^^;
「・・・・・・・・・・・まなちゃん、おかわり要る?」
「あう」
まなが、五枚目の煎餅に手を出していた

嘘級生〜オチが見えないぞ〜

「ていうか、お前干渉しすぎだぞ」
当利が、頭ごなしに俺を叱りつけた、昨日の顛末を話した所のコトだ
「そうかな・・・・・でも、気になるだろ、だって、好意があるわけだし」
「・・・・それがよけいなお世話だっつーの、お前・・・・彼女いるのに、なんもわかってねーな」
「なんだよ、なんでも分かってるみたいな言い方は」
面白くないコトを、言われる、むーっと、俺が顔をふくらませて窓の外を見る

「・・・・・・また、雪だ・・・・卒業式も雪かな・・・・」
「ん?・・・・・・そうだな・・・・・・珍しいよな、こんなに降るのって」
しんしんと降っている、ここの所異常気象のようだ・・・・・ま、二月も終わりかけ
当たり前か・・・・・・・・・
「卒業式終わると、テストだな・・・・・」
当利がぽつりと漏らした、そうか、二年最後のテストがあるか・・・・・ぼーっと、鉛色の空を見上げながら
やっぱり二人で授業に参加しなかった・・・・テスト大丈夫かな

昼放課になって、当然というか飯を早々に切り上げて、嫌がる当利を連れて保健室に直行した
「さり姉は、どう思ってるの?くろねこ先輩のコト・・・・」
どうやら、先約がいたらしい、あ〜る子さんが、さり姉とお茶を喫しながら座談している
「別に・・・・もー、いいじゃないの、あたしのコトは、ねえわーふくん」
さり先輩がやれやれって顔で、俺に話題を振ってきた
「・・・・・・でも、本当の話し俺も気になってるんですよ」
「あうー、何?二人ともグルなわけ?」
ヽ( ´ー`)丿な顔をするさり姉、そこに当利が割って入った

「先輩が、違うって言ってんだし、もう辞めとけよ高馬・・・・それに、あ〜る子さんも」
厳しめの声で当利がそういう、さり先輩がうれしそうに当利の側につく
「そうだよ、なんでもないんだし・・・・もう、ほっといてちょうだい、面倒なんだから」
タバコをふかしながら、先輩が言う
「・・・・・・・そうやって、やったら物わかりが好いところが嫌」
「え???」

急にあ〜る子さんがキレた(笑)当利に、一瞥してくいっと、保健室を出ていった
慌てて、当利がおっかけて出ていった、廊下の外で、何か口論の声が聞こえたが
『・・・・・・・・何?っていうか、誰??』というような、台詞が女の子の声で聞こえた所で
沈黙した・・・・・な、何があったんだろう

「ふぅ、もぅ、二人とも本当・・・・・お節介だってば・・・」
先輩がポットからお湯をだして、急須に入れている、俺にも茶を薦めてくれた
「・・・・・先輩達って、何もないって・・・・・高校の三年間どうやって過ごしたんですか?」
「?・・・・・・・聞きたいの?面白くないよ」
ふふっと笑って、俺に茶菓子を今度は渡してくれた
のどかな保健室だ、うーん、ところで先輩はどうしていつもここにいるんだろう

時折本当に、怪我をした生徒がやってくるのだが、先輩が適当にクスリを見繕って
渡している所を見たコトがある、なぜだろう、学園七不思議の一つである

「・・・・ま、折角だからそっと、あたしとくろねこクンとの出会いを教えておこうか」
そう言うと、灰皿を手元に引き寄せて、お話する体勢になった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うーん、普通の高校ねえ・・・・・」
新入生なのだが、異常なまでに短いスカートですらりと脚を覗かせている女子生徒が立っている
秋積さり(15)である、ちなみに誕生日がゴクミと一緒のため、まだ15になりたてなのだ
新入生にしては、大胆にも若干遅刻気味の登校だが、さほど気にもとめず
入学式の会場へと移動する

「・・・・・・・・・・ふーーーん、とりあえず健全そうな学校よね・・・・やれやれ、どこで吸おうかな」
と、何を吸うのかは、敢えてここでは触れないが、色々と人目につかない所をチェックしていく
すると、やや大きめの桜の木の下に、すらりと背の高い男子生徒が立っているのが見えた
線の細いマスクに、すらりと伸びた背、やや薄倖そうな印象を与える少年だ
杉本くろねこ(15)である、この時から、妙な行動を取る男であった

「変わった人ね・・・」
さりのくろねこに対する第一印象はそんなモノであった、ここで話しかけると
色々と物語が膨らむのだが、そんな気持ちは微塵も存在しないため無視する、さり
が、しかし・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・ごめんね、これは受け取れない」
「・・・・・・・・・そう・・・・・・ごめん、悪かったなひきとめて」
そんな声に、ぴくりと身体が反応するさり、何々?ひょっとして、告白劇!?
しゅたっと、木陰に身を潜めて様子を探る、ふむ、髪の短い八重歯の見える女の子が
どうやら告白したらしい、心の強そうな太い眉をやや寄せて悲しそうな目をしながらも
無理に笑って去っていった・・・・うーん、青春だわ

「・・・・・・・・・・・・桜か・・・・・」
くいっと、男子生徒は木を見上げた、上級生かと思ったが、よく見てみると
新入生の記しが左胸につけられている・・・・って、入学早々、いきなり告白ってか!?
妙に好奇心がわいた、ふと話しかけてみたい衝動に駆られた・・・・・が
ここで話しかけていれば、すばらしいストーリー展開が望めるものの、さりにその気持ちはない
黙ってそこを通り過ぎる
が、しかし・・・・・・・・・・・

どた!!!!
「え・・・・・・・??」
急に、鈍い音がした、振り返ってみるとさっきの男子生徒が倒れているではないか
そう、このころからどうも身体が弱かったらしい(−−;、ここで、慌てて駆け寄ってそっと抱き上げたり
すると、かなり物語は盛り上がるのだが、特に自分に関係有ることでもないため、その場をやはり
立ち去ろうとする、さり
が、しかし・・・・・・・・・・・・

「やだ・・・・・・・式始まってるじゃん・・・・・遅れて入ってくのかっこわるいなぁ・・・・」
そこで、ふと、さっき倒れた男の子のコトを思い出す、そうだ彼をかまってて、遅れたコトにしてしまおう
そう考えるや否や、他の誰かに発見される前に手をほどこそうと、現場へと急行する
「もしもし?・・・・生きてゆ?」
がくがくと、肩をゆすってみる、顔は、本当に少女マンガから抜け出たようにきれいだ
大きな桜の木の下、そっと風が吹き抜け花が舞う、その下で、うら若い男女が
寄り添っている、っていうか、むちゃむちゃ絵になる二人

「あ・・・・・・・・・」
「おや、気付いたね」
男の子がゆっくりと身体を起こした、二、三度頭を振って、既に自分の状況を掴んでいたらしく
そっと、さりにお礼を言う
「ありがとう・・・・・・・なんか、ごめんね」
「え?」
そう言いながら、そっと、さりの髪についた花びらをとった・・・・・柔らかい笑顔が印象的だった、このころから
どうやら、あのキャラだったらしい<くろねこ先輩
そして、二人で遅れて式場へ行った・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「って、感じね・・・・・・・」
先輩はふいーっと、また一本火をともして、口元へと持っていった
「ええ、劇的な出会いじゃないですかぁ・・・・・なんで・・・」
俺には少し理解しがたい、普通こういう展開になったら、何か関係が進んだり
お互いが気になったりするのが、当たり前のはずなのに・・・・
「その後はどうなったんですか?」
「別に・・・・・三年間クラス一緒だったから、クラスメートとして遊んでただけだよ」

そして、そのまま俺はまた教室へと戻り、授業を受けた
最後に言ってくれた言葉に嘘は見あたらなかった、先輩は
本気でそう思ってるんだ・・・・・・・あれだけ、長く色々な関係があったろうに
何も感情が湧かないなんて・・・・俺にはわからない所が多い

なんだか、むしゃくしゃしたので、当利にいたずらして遊んだ
慎重に、シャツの腕をまくっていき、左腕に、桜吹雪を彫り刻んでやった
これで、お前も金四郎だ、うむ、これにて一件落着

そして、ばれる前に退散する、いつものようにまなと帰る道
「・・・・・・・なあ、まな」
「あい?」
くるりとこちらを向く、まな、最近ロ加減が落ちてきて、俺としてはうれしい限りだ
「・・・・水沢って人のコト・・・・聞いてもいいか?」
「・・・・・・・・・・・・お兄ちゃんのコトですか・・・」
やはり、かげりを見せるまな、どうも触れて欲しくないコトなのだろう・・・けど
気になるから仕方ない

「何かあったのか?あの人・・・・誰なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・少しの間、お世話になってた人です、その時、お兄ちゃんって呼んでたんです」
かつかつと、二人の歩く時に奏でられる靴音が響く
「・・・・・・色々と、あって出会った時にしばらくお世話になってたんです、その時に身の回りの世話をしたり
してて、お兄ちゃんって呼んだりしてた仲です」
・・・・・・・・そうか、この前水沢さんが言ってた関係ってのは、だいたい合ってたのか(−−;
まあ、そんなコトはいいや・・・・・・まなに謎がまた、増えた・・・・この子はいったい何者なのだろう
今日の所は、これくらいにしておいた、辛そうに喋るまなの横顔に耐えられなかったというのが
本音だけど

しばらくは、そっとしておくべきかと思う・・・・
卒業の日が近づいてきている