数刻前

「さてさて、プレ一人暮らし♪、何をするべきかな♪」
ずいぶんとはしゃいでいる当利が、何をしたものかと頭を抱える、どうも、うれしくて仕方ないらしい
「とりあえず、晩飯の下ごしらえをしておくべきか・・・・」
と、おもむろに米を研ぎ出す。がっしゅがっしゅと、かき回して炊飯器に釜をセットする、速攻で終わった

「・・・・ふむ、仕方ねえ、掃除でもするか♪」
普段なら、絶対やるコトのない家の掃除をやる、そう、一人暮らしの基本なのだ
掃除、続いて残るは洗濯か・・・と、既に頭の中でシナリオを構築しつつ、掃除を終わらせる
てきぱきと、洗濯するものをまとめて、ごうんごうんと洗濯機をまわす、ついでに風呂の方も
チェックしておく、うむ、夕飯の後にでも入るか

てきぱきと、親が居るときには、言われても働かないコトをさくさくとこなす
ああ、一人で生活してやるんだ・・・しみじみと、考えつつ
洗濯物を干し終える・・・ふーっと、一息ついて、次にやるコトを考える

「・・・・うーん、玄関に水でも撒いておくか・・・・」
もう、一人暮らしだからってそんなコトしてる男いないよってつっこみが入れたくなるが
今の彼には届くコトもない、ざざーっと、バケツに水を入れて、玄関へと向かう
「・・・・あ、いけね、ひしゃくの代わりになるモノなかったっけ?」
ふいに、玄関前で水を撒くものがないのに気付き、きびすをかえす
なお、通常は、そんなもんで撒かないで手でささっと撒くものである

玄関にバケツをおいて、戻る・・・・そこで、何か妙な感覚に気付く
「・・・・身体がなんか、重いな・・・・節々が痛いし、筋肉痛がするぞ・・っかしいなあ」
肩なんかをぐりぐりまわしながら、戻る途中、意識の中では真っ直ぐ歩いているのに
ビジョンには、だんだんと床が迫ってきている

「あれ?・・・・なんだ?目でも悪くな・・・・・」
ごすっ!!!!・・・・・・・・・・・・倒れ伏す当利、思考の中では、まだ自分の変化に気付いていない
「なんで、俺の目の前に床があるんだ?・・・・俺は、水を撒きにいかないと・・・・・」
と、意識だけ元気なのだが、身体がオーバーヒートしている・・・・どうやら体調不良をきたしていたらしい
実際の所、思考も飛ぶほど高い熱が出ているのだが、そんなコトは一人暮らしが愉しみ菌によって
感覚を麻痺させられ、倒れるまで気付かなかったのだ、やがて元気だと疑うコトもないまま意識は飛んだ

そして、あ〜る子が扉を破壊するに至る

「ちょっと、当利くん!!・・・・・うわ・・すっごい熱・・・・当利くん!!しっかりしてよ!!」
「うう・・・・み、水撒き・・・・・・水撒きしないと・・・・」
「何言ってんのよ・・・・・おでこに、二、三発つっこみいれるよ・・・・っと、仕方ないなぁ」
お世話娘が、せかせかと当利を介護する

嘘級生〜はあ、話しを書くのって難しいんだね〜

ことことことこと・・・・・・・・、とんとんとんとんとんとん・・・・・・

「う・・・・・・・・・・なんだ?なぜ俺は寝ているんだ?・・・・・・」
当利が目を覚ました、そして、落ち着いて自分の置かれている状況を分析する
(・・・・・・確か、俺は・・・・・一人暮らし実践するために、色々と働いていて・・・・・
なんだ、どうして寝てるんだ?・・・っていうか、気のせいかさっきから、台所で音が・・・
なんだ?あの小気味好い包丁の音は・・・・・は!!、玄関に水撒かなきゃ!!)
がば!!

布団を跳ね上げて起きあがった・・・・・つもりだったが、身体はそのように動いていない
ゆっくりと、腕が上へと上がっただけで身体は微塵もその位置から動いていない
「おやおや・・・・・やっと、気付いたの?・・・大丈夫?お医者さん呼ぼうか?」
聞き慣れた声が、台所から近づいてきた
「・・・・あ、あ〜る子さん??・・・な、なんで」
「いや、なんでって・・・・当利くん、いきなり倒れてたから・・・・」

あ〜る子が、なにやら、鍋のようなモノを持って当利の横へと座った
「まだ、起きあがるコトも出来ないのね・・・・どうする?お医者さん・・・」
「いや・・・いいっていうか、俺・・・・・」
「熱があるのよ、8度5分くらいね・・・・学校にいる時気付かなかったの?」
あ〜る子が不思議そうに聞く、言われてみれば、なんか身体が熱くたぎっていたように
思えるけど、てっきり、愉しみで身体が興奮していたと思っていたなんて、言えない

「ま、あたし帰るけど、ほら・・・ここに、お粥作っておいたから・・・あと、キャベツの千切りと・・・」
「え?きゃ、キャベツの千切りって・・・・単体で俺にどうしろと?」
「ビタミンが不足してるからちょうどいいのよ、わがまま言わずに食べてね♪」
とだけ、言い残しすくりと立ち上がって視界から消えていった、一つ言っておくが、あ〜る子さんは
Gパンを履いていたので、当利が見上げても問題はない

結局、気怠く重い体を動かして、粥をすする・・・・・・・・・
「・・・・・・・・かれぇ・・・・・・・っていうか、なんだ、この生姜の量わ・・・・」
ちなみに坪倉の家に伝わる秘伝の風邪のための料理「生姜粥」である、しかし
あ〜る子のたぐいまれなオリジナリティが加味されているコトを付け加えておく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・てなわけなのよ、当利くん風邪ひいて倒れてて・・・」
あ〜る子が、当利がいるべき席に座って、俺に話しをしてくれている
「へぇ・・・当利の奴倒れたのか・・・・ペストにかかってもぴんぴんしてそうなのにな」
「無茶苦茶言うねえ(^^;・・・ま、確かに病気で倒れそうな人じゃないけどさ・・・」
「・・・・・・で、あ〜る子さん」
「何?」
だいたいの話しを聞いた、なるほど、当利は風邪で倒れて今は家で寝ているらしい
一人暮らしが満喫出来なくて、おそらく死ぬほど悔しがっているだろうというコトは、想像にたやすい
が、それとは別に問題がある

「・・・・・なぜ、あ〜る子さんが当利の席で授業を受けているのかな?」
「やーねー、当利くんのノートとってあげてんじゃないの、別に、わーふさんの隣に座りたいからって
見え見えの手じゃないのよ♪」
とかいいながら、席の幅は人が通れるどころか、ノミでも難しいくらいだ
「・・・なんで、机くっつけてんすか」
「だって、教科書違うんだもん・・・いいじゃん、あたしも、この教科とってるから」
「大学じゃないんだから(−−;」

と、結局この日一日中、あ〜る子さんは当利の席で授業を受けていった、先生誰も気付かないから
世の中間違ってる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「って、もぉ、いいよぉ・・・あ、あ〜る子さんに悪いから・・・・」
当利が、困った声をあげている
「うるさいねえ、病人なんだからささっと黙って寝ててよね、あたしが、適当に家事やっといて
あげるからさ・・・ほら、無理して起きない!!」
あ〜る子が、まるで家政婦のように働いている、困惑する当利
(だ、ダメなんだよ・・・誰かに頼ってたら、一人暮らしにならないじゃないかぁぁぁ!!!)
頭を抱えて、泣きわめきたい所だが、身体が相変わらず動かない
「さてと・・・次は、洗濯か・・・」
「ああ・・・・お、俺の愉しみが・・・・・・」
どんどん、突然やってきた世話焼きのせいで、自分の愉しみが消えていく・・・・涙なくして
この現状を見続けるコトは彼には出来ない

「あれ?何泣いてんの?そんなに辛いの?・・・もぉ、仕方ないな、ほら、今日の夕飯も作ってってあげるよ」
と言うや否や、台所を勝手にいじりだした
「も、もぉいいってばぁぁぁぁあぁぁぁ!」
当利が叫ぶのもむなしく、まるで、自分の家の台所のように扱っていくあ〜る子

当利が倒れてから毎日これが続いた

昼は、わーふの横で授業を受けて、夕方からは当利の家で家事をしている
何が彼女をそこまでかりたてるのかわからないが、とりあえず、当利が嫌がっているのは確かだった
そう、彼の願いは彼女がいるかぎり叶うコトがない
「・・・うう・・・一人で、家事やって一日過ごしてぇ・・・・・・・」
何度目かの涙が枕を濡らした
「あ!!枕、汚したね・・・もぉ、ほら、カバー変えるから、頭どかして♪」
「あうあう・・・・・」
まるで、寝たきり老人である

そうこうしながら、5日が過ぎた(笑)
最初のうちは、何度も抵抗しようと、いない間に動こうとしたが午前中は身体が
全く言うことを利かず、午後からようやく動き出した身体をひきずりながら掃除などをしようと
するため治りは遅れ、やってくる、おさんどん娘(注:あ〜る子)に発見されて布団に
戻されるという日々が続いた、まるで棺桶デスマッチである

しかし、この5日目には、違う思考が彼を支配していた
(・・・・・・これって、もしかして一人暮らしより美味しくないか?)
やっと気付いたという感じであるが、そう、現在の半同棲のような生活
しかも相手が、あ〜る子である・・・一度は玉砕したとはいえ、決して諦めたわけではない相手
その子が、毎日かいがいしく(何か違う)身の回りの世話をしてくれているのだ
これを至福と言わずになんと言おう?

と、気付いた時には既に遅く、身体は完全に回復していた、少々だるい気がするが
それは寝たきりだったせいだろう・・・・・気付くのが遅かった・・・・少しうなだれるが、今日も何も
知らずにやってくるだろうから、せめてお礼を述べようと心に誓った

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて・・・・・そろそろ顔色もよくなってきてたしな・・・ま、あたしもそれなりに楽しかったしこれくらいが
潮時か・・・・・・」
とあ〜る子が、買い物袋を持って夜道を歩く、そう、暗い夜道だ・・・・・・・・・そんな所を無防備な女の子が
一人歩きしていて何も起こらないであろうか!?(なんだこの文体は)

「・・・・・!!!・・・・・な、何か用?」
「・・・へへへ、なんだなんだ、今度は通い妻か・・・まあ、こりねえ奴だなぁ」
思い出すのも面倒だが、以前あ〜る子に絡んできた奴数名だ、暗い夜道にこれほど
似合う人相の奴もそうそういない、買い物袋をぎゅっと握るあ〜る子
「何か用?・・・・あたし、忙しいんだけど・・・・・」
「連れないねぇ・・・・また、おねが・・・・・」
がすっ!!!!!!!
「ごあ・・・・・・・・・・・・・・」

男が話を切り出す前に、あ〜る子が買い物袋でアゴをかちあげた、ちなみに、なぜか買い物袋は鉄板で補強されている
もんどり打って倒れる男、しかし、他の男どもが一気に動いた
「ざけんな、このアマぁ!!!」
「わわ・・・!!な、何マジで怒ってんのよぉぉぉ・・・・って、い、いやぁぁぁぁ!!!!」
夜道に黄色い嬌声が上がる!!!

ばき!!・・・ぱりんぱりん!!ぷち!
「な、なんだ!?」
当利が家の台所で驚いている、突然、愛用の箸が折れて、茶碗が割れた上に、服のボタンが飛んだのだ
「・・・・ふ、不吉な・・・・まさか、あ〜る子さんに何か!?」
そう思い、慌てて玄関を飛び出す

ぶち!!ごて!!ぶぶーー・・・にゃー〜・・・♪
勢いよく飛び出した当利だったが、突然靴の紐が切れて、転び、その目の前を
霊柩車が通っていき、自転車に乗った、くろねこ先輩がにゃーなどと言いながら横切っていった、不吉だ!!(そうか?)
「あ、あ〜る子さぁぁん!!!!」
当利走る!!!