「・・・・・・・・・・学校辞めるのか?」
「・・・・・・ええ、ナイショにしてましたけど俺、大検もってますから」
おいおい
「・・・・・・・しかし、なぜまた急に」
「急・・・・・・でもないんです、色々ありまして・・・・・」
「そうか・・・・・寂しくなるな・・・・・」
「ありがとうございます」
しゅぼっ・・・・・・・みなつき先生がタバコに火をつけた
「わかった、話の方は俺がつけておこう・・・・」
「お手数かけます、先生」
「残念だな・・・・お前か、杉本かってくらいなのにな・・・・」
「くろねこ先輩ですか・・・・越えられませんよ、僕には」
ひときわ悲しそうな目をする見城、そこへまなが戻ってきた

「みなつきさーん、あ〜る先ぱ〜い♪・・・・・・」
「どうした?まな」
「さっき、あそこでさりねい様に会って、お饅頭もらっちゃいました」
「さり姉が?」
まなが走ってきた方向を見るがいない・・・ふぅ、とため息をつく見城
「ふむ、秋積が饅頭の差し入れって・・・・・・こ、これは!!」
みなつき先生が、驚愕する
「ほえ?」
「・・・・・・な、何!!??」
ほえほえ顔の、まなをさておき見城も狼狽する
「な、何?・・・・か、カビでも生えてるの?・・・あうー、見えない見えない」
まなの背では、みなつき先生の持つ位置がのぞき込めないらしい
「なんで、こんなモノを・・・・・」
二人だけ、妙にシリアス顔で語りあう、おいてけぼりで面白くないまな

「・・・っと、そろそろ帰る時間だ・・・見城、もってくか?」
「ふざけんでください」
笑顔で、見城と別れた、・・・・・・・何、何?なんだろな?
まなが、みなつき先生が傍らに抱えるモノに興味を示し続ける
帰宅後
「ふぅー・・・・じゃ、俺が先に風呂入るからな」
「はーい♪・・・・・・・さてと」
まなが、みなつき先生がいなくなった隙に、そっと台所を物色して饅頭を発見する
「・・・・・・はむはむ・・・・・!!!ぅんんん!!!」
くねくねおろおろ・・・・のたうちまわる、まな
饅頭の箱に文字が大きくプリントされてる

「なごやん」

嘘級生〜ふーむ、前説がだんだん意味ないね〜

体調は全快だ、今日は割と時間にも余裕があるし、らくらく登校♪
うーん、俺ってなんて真面目な生徒なんだろう
いつもなら、ほとんど他の生徒達と会うコトもないが、今日はゆうゆう歩いている
「あれ?・・・・・くろねこ先輩!!」
前方に、くろねこ先輩を発見した、思わず声をかける
「ん・・・・おや、高馬くんか・・・・おはよう」
きらり☆、相変わらずきれいな笑顔にどきっとさせられる
「おはようございます、先輩朝は早いんですね」
「まあね、でも長期休暇とかに入ると、ずいぶん破綻してるよ」
はははと、笑う先輩、なんて素敵なんだろうな・・・俺も、こうありたいとしれしれ思う
「・・・そうだ、先輩って恐怖を覚えたコトありますか?」
「恐怖?・・・どうだろうな」
「実は、この前俺殺意を感じたんですよ・・・ものすごい殺気を・・・」
「へー、何か悪いコトでもしたのかい?」
「心当たりがないんですけどね・・・うーん、やっぱ誰でも感じるモノじゃないのか」
と、くだらない話をして校舎へと消えた

教室に入る、自分の席に座ると、当利が話かけてきた
「高馬・・・・・・今日の昼飯どうする?」
こいつは、朝イチからなんで昼の話をするんだろう・・・・
「ああ、今日はまなちゃんに久しぶりに会ってこようと思ってんだ」
「お、そうか・・・・じゃ、仕方ねえな」
そう言うと当利は自分の席に腰を下ろした
ぐさぐさぐさ・・・・・
「かかったな、バカものめ」
「・・・・・・ぐ・・・・・・・あ・・・・・て、てめ・・・・(怒)」
学生なら一度はやらねばならぬ、イスに画鋲攻撃、今時こんな古典的なモノに
ひっかかる奴も珍しいが
「お前なら、座ると信じてたよ☆」
「何、歯ぁ光らせてんだ、こら(怒)」
どかばきどかばき・・・・・・・・、どうやら、当利は元気らしい・・・よかったよ本当

滞りなく進む授業、いつものようにぐっすりと眠る当利、何も変わってない日常が
ただただうれしいと思う・・・・って俺って、詩人か?おぃ♪
と、とりあえず授業に参加しようという気持ちもさらさら無く、気付けば昼になっていた
「さてと・・・・・」
「んあ・・・・・・・そうか、いってらっしゃーい」
むくりと起きあがった当利が、俺を送り出してくれた、うーんあいつ
何しに学校来てるんだろうな・・・・ま、いいか
階段をすたすたと降りる
「まずは、教室を訪ねるか・・・・・うん、その後食堂かな」
とりあえず足をまなの教室へと向ける、わいわいとうるさい中をかきわける

「あのさ、まなちゃん居るかな?」
目の前を通りかかった女の子を引き止めて、聴いてみる
「まなちゃん?・・・・・・・??」
きょとんと、??マークを大量に放出している・・・・ん?そうか、まなちゃんて
聴き方が悪いのかな・・・・えっと
「あ・・・霧島さんって居るかな?」
「・・・・あー、霧島さん・・・・・ねえねえ、霧島さん、今日居るっけ?」
「あれ?そういえば、どうだったかな・・・・」
「今日見てないよー・・・休みなんじゃない?」
女の子達のネットワークがそう次々と情報を吐く・・・・・なんだろう、この違和感は
ふと、妙な感じを受けた・・・・おかしいな、クラスメートのコト知らないってのも・・・
前来た時はこんなんじゃなかったような気が・・・・・・

「・・・あー、そういえば今日休みです、そうそう、なんか倒れたとかなんとか・・・」
「た、倒れた!?」
「わわ・・・・・や、あ、あたし詳しいコト知りませんけど・・・・あうあう」
思わず大きな声で叫んでしまった為、女の子が涙目になってしまった
あうー、失敗した・・・・って倒れたってのは、尋常じゃないぞ・・・・・みなつき先生んとこ行くか
「ありがと・・・・ごめんね」
そう言い残して、職員室へ向かう・・・・・職員室に近づくに連れてだんだん
人の数が減ってきた
がらがらがらがら・・・・・
「失礼しました・・・・・・お、高馬くんか」
「あれ?見城・・・・何してんだ?」
職員室の扉が突然開いたと思ったら、中から見城が出てきた・・・なんだこいつ
「なんの用だ?」
「いや、あんたに用があるわけじゃないよ(^^;」
と、何か絡みたそうな見城を捨てておき、みなつき先生を探す・・・いたいた
「先生・・・・」
「ん?・・・・どうした、高馬」
「あの・・・・・・・・・」
よくよく考えたら、なんで俺がまなのコト聴きにきたんだろう(^^;
まずいな、保護者でありながら、先生だしな・・・ずばっと聴くのも悪いかな
「どうした?なんか面倒なコトでもあったのか?」
「い、いえ・・・・その、まなちゃんてどうしてるのかなーって・・・・」
「・・・・・・・・お前なあ、わざわざ職員室まで来て何を聴くかと思えば」
ほへーっと、ため息をつき、みなつき先生が弁当を机に置く、そして俺にイスを薦めてきた
「ま、座れ・・・・色々話したいコトもあるしな」
「はぁ」

「お前、飯は?」
「いえ、まだですけど・・・・」
「そうか、じゃ、これでも喰え・・・・・・」
先生が、俺に饅頭をくれた・・・・・・なんだろう、嫌な予感がする
「さてと、まなのコトだったな・・・・・・・」
みなつき先生が話始めた
「お前から見て、まなが、変わったような気はしないか?」
「変わる?・・・・・いや、最近俺、まなちゃんと会ってなかったからわかんないんですよ」
頭をかく俺、そう、本当に全くといって好いほど会ってない、それまで会っていた時間と
同じくらい坪倉さんと一緒にいたような気がしないコトもない・・・
「そうか・・・・・実はな、妙に成長してきたんだよ」
「好いことなんじゃないですか?」
「うむ・・・・・はた目からは好いことに見える・・・・だがな、何か違うんだ」
「違う?」
首をひねる俺、っていうか先生、まなの保護者をするコトを気付かないうちに、育成ゲームと間違えてる
のでないだろうかという、錯覚に陥るっていうか、あり得るなこの先生の場合(−−;

「いや、先生、その今日まなが休みだって聞いたんですけど・・・・」
「ん?・・・ああ、今日は家で寝込んでるよ」
「な、なんで!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・さて、そろそろ授業が始まる、お前もう帰れ」
いきなり、あからさまに怪しく話をそらした、って、何があるんだよぅ
食い下がる俺を、さっさと追いだし、先生は授業に向かってしまった・・・・くそう
腹いせに、机の中に何か入れておいてやろうか・・・・・・と、思うだけですたすたとそこを後にした

午後の授業も気怠く終わった、当利は真面目に掃除にいそしむなどと言うので
俺は先に帰るコトにした・・・・・ふー、帰りにまなちゃん所行ってみるかな・・・・
下駄箱にやってくる間そんなコトを考えていた
「?・・・・・・なんだ?」
下駄箱に手紙が入ってる・・・・今時・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・校舎裏で待ってます。 坪倉」
手紙をがさがさと畳んでポケットにしまった・・・・・どうしよう・・・・・

まなのコトが気になるのは確かだけど、むげにこれを断るような勇気がない
むー、これはとりあえず坪倉さんに会って、それからまなの所へ行くかな・・・・
特に気にもとめずに俺の選択は、あ〜る子さん経由で、まなの所を・・・・
そう、他意はない、ただそう思ったから行動しただけ、別にまなをなおざりに
してるわけじゃないよ・・・うん

すたすたと、校舎裏へと侵入する俺、やはり人影は無い、うーん、なんか暗いし
危ない所だよなあ・・・・完全に陰になってしまってる、この場所、下手をすると
三年間通い続けてもここの存在を気付かないかもしれない、それくらい寂しい
ぼーっと、あの時みたく突っ立ってる俺・・・・しかし、なんだろな・・・手紙なんてらしくない・・・?

「手紙・・・・・・・・・、本当にこれ、坪倉さんの・・・・・・?」
気付いた時には、遅かったのかもしれない・・・・そう、坪倉さんが手紙なんぞで
俺に何かを伝えるだろうか。あの性格からして、まず間違いなく電話とか手紙とか
そういうのに頼らないような気がする、やっても、伝書鳩とか机に落書きとか、きっと
派手なパフォーマンスで攻めてくるような・・・・・・・、そして、ふと嫌な感じを覚える

「・!・・・・・・さ、殺気・・・・こ、この前の?」
怯える俺、まただ・・・・あの殺気がまた、近づいてくる・・・・・
あの時は、当利かとも思ったが、違っていた・・・そう、やばい感じがする・・・・
「しまったな・・・・ここって、袋小路じゃん・・・・・・」
完全におびき出されたってコトか・・・・やべー・・・
俺の顔を冷や汗が流れる・・・そして、ふっと、角から何人もの男どもが現れた
「・・・・・・・おやおや、色男くんじゃないか」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうした?蒼い顔して」
奴らだ・・・・・あの日、坪倉さんに絡んでて俺がナニを蹴り上げたら悶絶してた奴他数名だ
まずった・・・報復に来たのか?・・・ぐわー、流石にあの手は二度も通じないぞ・・・
「ちょうどいいな、この前のかりを返させてもらわないとなあ・・・・」
へへらへへらと、うすらバカな笑みを浮かべるヤバイ奴ら・・・むー、今回ばかりはまずいな
「な、なんの用だ?」
「だから、かりを返すんだって」
「かり?・・・・つ、作った覚えはないぞ、ってだいたいそんな数で来るなんて卑怯だ」
「ナニを蹴り上げて逃げるような奴に言われたくない」
「あ!!あんなところに・・・」
「ナニもいない」
ぐわ・・・・・こいつ、強えぇ(違うって)
俺の全てのモノをはじき返してきた・・・・ぐあ、万策尽きたぞ・・・・・じわじわと奴らがにじり寄ってくる
ちくしょ・・・・・・どうしよう・・・・・

がさがさがさがさ・・・・・
突然俺の頭上の木がうるさく鳴った・・・・なんだ?
俺が上を見た瞬間、何かが降ってきた
「・・・・・・・・・・ふむ、とりあえず死ね」
「なんだ、てめ・・・・・・」
「見城あ〜る・・・・・・悪いがあんたら死んでくれ」
相手の男どもが一瞬ひるんだ、それが命取りになった
しゅぱーーーーーーー!!!!
「!!!!!ぐうぇあわわわ!!!目、目がぁ、僕の目がぁ!!!」
見城が、いきなりマスタードスプレーをひっかけたらしい、ってなんて卑怯な奴なんだ(^^;
目の痛みにのたうちまわる男どもを、情け容赦なく蹴りまくり、追い立てた
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
げしげしげしげしげし!!!!
「ひぃぃぃぃぃ・・・・・・・・・・」
叫び声が遠くなっていった、勝ちやがった(^^;

「け、見城・・・・・・お前・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
黙ったまま、見城が振り向いた、短い髪にさくっと指を通して前髪を
上げる仕草を見せる・・・・・・なんのつもりだ?
「高馬くん・・・・・・・・・・・・悪いな」
そう見城が呟いた時、俺の中の警報が大きく鳴り響いた

「・・・・・この感じ・・・・・・・ま、まさか・・・・・・・」
「すまないな、少し付き合ってもらおう」

見城が笑う、殺気の持ち主が笑う