とりあえず、殴ってしまった
泣いてる坪倉さんを見たらとりあえず殴りたくなってしまったからなんだが
非常に立場をまずくしてしまったのは確かだ、殺気だった男の顔が俺の目に写る
うわー、怒ってるよこの人ぉ・・・・・・

「いきなりやってきて、人の横面殴り倒して・・・・そら、死刑だわな」
男がうめいた、うーむ、どうやら俺は死刑にされるらしい・・・・まずった
じりっと俺も後退する、背中には坪倉さんが居ることを確認する
すすり泣くような感じではないが、泣いているのは確かだ・・・
それは、怒りにも似た・・・・うーん、何をそんなに怒ったのか
知らないがとりあえず今は、ここを脱出しないと・・・・・

「と、とりあえず・・・・女の子泣かした時点で、お前らのほうが悪いぞ」
「何わけわかんねーコト言ってんだ?」

とりあえず、男がじわじわと寄ってくる、うう、男ににじり寄られて悶絶するような趣味はないぞ
しかし、それ以上に問題はこれからだ・・・・ふと、地面を見ると土であるコトに気付いたこれは・・・
この土を使って、目潰しをしてうわわとかこのバカが言ってる間に、逃げよう
うむ、完璧な作戦だ(注:小学生のケンカの常套手段です)・・・・・俺がにやりと笑う

「何笑ってんだ?」
「へへへ、瞼の裏に、お前のお墓が見えるぜ・・・・・・とりゃ、くらえ!!!」
ずばっと、俺がしゃがみこみ、足下の土を拾いにかかる
ぐぎっ!!!!
「ぎわわわ!!」
しまった、勢いあまって地面で指をついてしまった、ぐぉぉ猛烈に痛い
計算では、もっと地面が柔らかいはずだったのに、日に当たらないこの場所の黒い土は
俺の指をかたくなに拒否した・・・・ってまずいぞ、俺

「???」
む、すっかり謎の行動をとった俺に動揺してる・・・チャンスか!!
俺は、目の前にあった、短い足二本が交わる部分を立ち上がり際に蹴り上げた
「!!!@@@@@@@!!!」
男が、かわいそうな声をあげる、うむ、俺の足に十分な手応えが伝わる(ちょっとイヤだったり)
うめきながら、潰れる男の上を、坪倉さんの手をとり飛び越えて逃げる

今は、逃げるコトで必死だ

嘘級生〜ふに、早まったなこの展開〜

「ふぅふぅ・・・・・とりあえず、大丈夫だろう・・・・」
がんばって走って、なんとか振り切った、一応身を隠せる程度の所に潜む形で居る
うむ、追っても来てないようだし・・・と、坪倉さんを・・
「え・・・と・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
何から聞けばいいんだろう・・・んと、参ったな・・・残念なコトにこういう場面に異常に
俺は弱くて何をどうしたらいいものやら・・・・
「聞いた?」
小さい声で、坪倉さんが俺に聞く・・・聞いた?何をだろう・・・
「・・・・・・・・・軽蔑した?」
続けて聞く、うつむいてるから顔は見えないけど、細かく震えてるのはわかる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌いに・・・・・・ならないでよ・・・・・・」
短い台詞なのに、とても長い言葉だったように感じる
「・・・・・・・・・いや、俺何も聞いてないし、なんのコトか・・・」
抱きっ!!・・・・・いきなり、正面から抱きつかれた
「ごめんね、わーふさん・・・・ごめん、今だけでいいから、あたし支えてよ・・・・
いつもはこんなんじゃないんだけどね、もっと突っぱねてるんだけどね・・・
どうしても・・・・今だけ、わーふさんにだけ・・・・・・」

自然と俺の手が坪倉さんを支えている、ふるふると震えながら俺の中で
泣いている・・・・・どうしたんだろう・・・・何を言われたんだろう・・・・俺が行った時に
聞いた言葉・・・・「男好き」・・・・・そんなバカなコトがあるわけないし・・・何かあったのかな
ふと、我に返っていた俺、少し明るい方へと視線を戻す

向こうも視線をこちらへ向けた瞬間だったんだろう
目があった・・・・そして、俺の胸が高鳴ると共に、細かい鼓動を刻む

まながこちらを見てる

「・・・・・・・・・・・・ま、まな!!!」
俺が思わず大きな声で叫んでしまった、坪倉さんをそっと俺から離し
まなの方へと足を出す、まなが俺の様子を見て逃げる
小さな背中がどんどん俺から離れていく、追わないと!!

「だめ!!・・・・お願い・・・一人にしないで・・・・・」
「坪倉さん・・・・・」
「まなちゃんじゃなくて・・・・あたしの・・・あたしの」
「坪倉さん・・・ごめん、俺・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
坪倉さんの拘束が解ける、行かないと・・・・俺は振り返りもせずにその場を
離れた・・・・そう、泣いていた俺を頼って泣いていた女の子を一人置き去りにして

「あー・・・・ちくしょう、いつもならこの辺りで転んでてもおかしくないのにな・・」
まなに逃げられた、色々な意味でショックだ・・・そして、驚きでもある
しばらく走っていくと小さな公園についた
きこきこきこきこ・・・・・・・・・・・・きこきこきこきこ・・・・・・・・
猫が一匹、ブランコに乗って揺れている
そのブランコをゆっくりと、揺らしている女の子が居る、まなだ

「まな・・・・・・・」
俺が声をかける、まなはこちらを見てくれない
「先輩のコトがわかりません」
「え・・・・・」
「先輩がどういう人なのか、私にはわかりません・・・・・・先輩が私にどうして
優しいのか・・・私すごくうれしかったんです、優しい先輩に会えて・・・・・・
本当、うれしかったんです・・・・・・でも、先輩はみんなに優しいんです・・・・
私にはわからないんです・・・・・・先輩が何考えてるのか・・・・」
「まな・・・・・・・」
きこきこきこきこ・・・・・・・・・・きこきこきこきこ・・・・・・・・
猫は不安そうな顔で、まなを見つめてブランコで揺れている

「先輩・・・・・・」
にこっと、まながこちらに顔を向けた
「しばらく、私一人でがんばってみます・・・・先輩にずっと頼ってばっかりで
甘えてばっかりだったから、先輩困らせちゃったし・・・・ちょっと、がんばってみます」
強いな・・・・そう思った、見た目とは違ってしっかりと、自分を持ってる
そして強いそう思った
「うん・・・・・・・・がんばれ」
俺にはこんな言葉しかかけてあげるコトは出来なかった、なんとなく
二人の関係が変わる、そういう気はした・・・間違いなく、そして、俺も変わらないと
まなが、俺の横を通りすぎていく、すれ違う瞬間が、なんとなくドラマのワンシーンみたいで
なんか、照れくさい・・・・・・・・・がしっ・・・・・え?
「先輩・・・・・・ごめんなさい、これで最後に・・・・・」
「ああ」
「辛かったんです、きっと・・・・他の人と一緒にいる先輩を見るのが・・・・
とられちゃった感じがして・・・・私のモノでもないのに・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
そして、後ろにあった暖かい感触が消えていった、振り返る
その小さなしっかりとした背中を、見送る

「まな・・・・・・・・・・」
もう一度、その少女の名前を呟いた・・・・そして、俺も公園を出て学校へと戻るコトにした
別れた数秒後に、まなが転んでいたなんて俺は知らない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校に戻った、あ〜る子さんを置いてけぼりにした場所をそっと通る
さすがに誰もいない・・・俺って、薄情な奴なんだな・・・・嫌われたかな
そこを通りすぎて、まなの教室へと戻り鞄を拾う
そして、学校を後にして家へと向かう

「おや、わーふくんじゃない?」
「え?・・・・・あ、さり先輩」
おっ、と珍しそうな顔をして、さり先輩がタバコ片手に俺の方へやってきた
うーん、ここ校門の前なんだけどなあ
「どしたの?なんか、いつもと路線違わない?」
「そうですか?いつも通りですよぉ」
先輩が、俺のコトをじーっと見て言う、どうやら、何か雰囲気がいつもと
違うらしい、うーん、ま、あんなコトあったし、当たり前かな

「ふーん、ま、なんか悩み事があったら、聞いてあげるよ、うん」
と、いかにも聞きたそうな顔を向けてきた、うーん、どうしよう・・
「いや、ちょっと・・・・・・・・」
「・・・・・うう、あたしじゃイヤなのね、いいもん、くろねこくんにでも話しにいけばいいのよ」
いきなりスネられた・・・あうあう、困るよう、これ以上の女問題は(ぉぃ
「なんてね、うーん、あんまりぷらいべーとに侵入するのはよろしくないよねえ」
煙をすーっと吐いて、そう言った、うーん先輩ってば様になるから凄いな
ふと、前からみなつき先生がやってきた
「よう、秋積、高馬」
「先生・・・どうしたんですか?」
「いや、なんだか知らないがお前の友達の当利の奴が暴れてるって話しでな・・・・」
うーん・・・・俺のせいだろうかな、ま、いいや別に
「ふーん、みなつきさんも大変ねえ・・・・」
「ふむ、そういうわけだ、じゃあな・・・・あと、秋積、タバコは軽いのにしとけよ」
ぴらぴらと先輩が走っていく先生に手を振る・・・・って、なんでおとがめなしなんだろう

「ま、なんか問題たくさん抱えてるみたいだけど・・・がんばってね」
「あ・・・ありがとうございます」
「うーん・・・・・なんか、堅いなあ、あ〜る君みたいに、もっと、砕けてくれないと」
「あの・・・・・・見城って、どんな奴なんですか?」
「ん?・・・・・・かわいい弟よ、うんうん」
秋積先輩がうれしそうにそう言った、うーん、弟っつーより舎弟だなあれは(−−;;
曲がり角で先輩とは別れた・・・・・しばらく一人で歩く時間だ
うーん、当利の奴が暴れてるってのはまずったかなとか、ふと思ったが、ま、他人の
コトに今干渉してるような余裕は俺にはないし、と捨てておく

ふと、悪寒が走った・・・・・この感じ、危険!!??