明治維新以降、日本は積極的に西洋の文化を取り入れてきました。中でも、交通の整備は、経済発展のためにぜひとも必要なことで、国内交通の整備は鉄道の敷設から始まりました。明治５年(1872)に日本で初めての鉄道が新橋〜横浜間に開通し、明治２２年(1889)には、現在の東海道本線が全通、明治４４年(1911)には、中央本線が全通しました。
　春日井市内には名古屋から放射線状に延びる２本の幹線道路が古くからありました。１本は、木曽路につながる下街道（善光寺街道、旧国道１９号線）であり、もう１本は飛騨路につながる上街道（木曾街道、旧国道４１号線）です。この上街道は，尾張藩によって整備されたもので、春日井市の西端を通り、牛山町をかすめて犬山に向かって造られていました。かっては、尾張藩主が参勤交代の折に好んで使用した街道であり、尾張藩の家老であった犬山城主成瀬氏の登城路でもありました。
　春日井市内の交通整備はこの２本の幹線道路に沿って始められ、下街道（旧国道１９号線）沿いには国鉄中央本線が敷設されました。しかし、もう１本の上街道（旧国道４１号線）沿いに近代的な交通機関が開通したのは大正７年(1918)に入ってからのことでした。
　大正７年、大曽根の丸八商会によって上街道の小牧・大曽根間に乗合自動車の営業が開始されました。幌型自動車で８人乗り、晴天の日には幌を畳んで走ったということです。２時間毎に発車し、春日井から大曽根まで乗車料金は片道５０銭で夜間は１０銭増しでした。以後乗合自動車事業の発達につれて車両も改善され、料金も安くなって大衆的な乗物となりました。特に、大正１５年経営者が味美の太田某となってからは種々な改良がなされ、料金は春日井から大曽根まで１５銭、１５分毎の発車となり交通が著しく便利になりました。
　昭和６年(1931)に牛山町を通る鉄道が名岐鉄道株式会社（現在の名鉄）によって開通することになりました。昭和６年２月１１日、上飯田〜新小牧間と味鋺〜新勝川間、４月２９日に新小牧〜犬山間が営業を開始し、上飯田〜犬山間を小牧線、味鋺〜新勝川間を勝川線と呼んでいました。上飯田〜小牧間には、瀬古、味鋺、味美、春日井口、春日井、牛山、間内、小牧口の各駅が造られました。
　工事は昭和４年頃から始り、線路に敷く砂利は庄内川からエンジン付きの牽引車に１５台程のトロッコを繋ぎ運ばれました。工事の完了と同時に写真のようなガソリンカーが運び込まれました。ガソリンカーは、国鉄勝川駅までは中央線で運ばれ、勝川駅からは道路の中央部に仮の線路を敷いて、ガソリンカーをジャッキを使って乗せ、人力で押して運び、新勝川駅から本線に運び込んだということです。ガソリンカーは、あずき色で現在の大型バスくらいの大きさであり、座席はロングシートが両側に１列づつついていました。満員になると三階橋を登る事が出来ず、バックして勢いをつけてやっと登ったということです。料金は味美〜上飯田間が１０銭でした。
　その後小牧線は昭和１７年(1942)に電化され、以来尾張北部の人たちの重要な足として利用されてきました。現在、名古屋市地下鉄との連絡を目指し突貫工事が行われています。平成１２年(2000)末には全線の複線化工事が完了し、平成１５年には名古屋市地下鉄との連絡工事が完了する予定になっています。