牛山墓地の六地蔵

牛山墓地の正面入口を入ったところに一段低くなった長方形の区画があります。土葬が行われていた当時、この場所は、死者を送るための儀式の場所でした。中央に棺桶を置くための石の蓮台が置かれ、その前には同じように石で作った経机が置かれていました。そして、両側には、六体のお地蔵さんの石像が置かれていました。この六体のお地蔵さんは、六地蔵と呼ばれています。
六地蔵が見られるのは、墓地の入り口が圧倒的に多く、これから六道に旅立つ死者を守るためで、死者の世界と現世との境である墓地に立って悪霊などの侵入を防ぐという地蔵の「塞の神」的な性格が窺われます。
仏教では、命は六道を転生するという六道輪廻の思想があり、死んだ後、四十九日を過ぎると、六道と呼ばれる地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天の六つの世界のどれかに生まれ変わってくると言われています。お地蔵さんと呼ばれている地蔵菩薩は、六道の全てに姿を現すことのできる唯一の菩薩であり、この六道のすべての生きものを相手に教えを説き、救いの手を差し伸べてくれるのだと信じられています。死んだ肉親・知人たちが、六道のどこに生まれ変わっていようとも、ぜひその人を救って頂けますようにと願って六地蔵が作られました。六体のお地蔵さんには、それぞれ名前がついています。文献によって相違点がありますが、『覚禅鈔』の例を出せば、先に書いた六道の順番で、大定智悲・大徳清浄・大光明・清浄無垢・大清浄・大堅固の各お地蔵さんです。

牛山墓地正面斎場周り (土葬当時は、ここで葬送の行事が行われた。)

六地蔵1

六地蔵2

六地蔵3

六地蔵4

六地蔵5

六地蔵6

昔は、葬送の列に六人の子供がそれぞれ蓮の葉を一本ずつ持って加わり、お墓に着くと、六体のお地蔵さんに一本ずつ供えたものでした。
現在、蓮台は、心無い人に割られてしまい写真中央の場所に埋められています。経机は、脚が壊され(写真奥に見ることが出来ます)放置されています。六地蔵も勝手に場所を変えられ、後日加えられたであろうと思われる水子地蔵と混在してばらばらに置かれています。
写真は、混在するお地蔵さんの中から昔からある六地蔵と思われるもの六体を掲載しました。
多くの仏門では、お盆に死んだ人たちが帰ってくると言われ、各家に精霊棚を飾り精霊さまを迎えます。お盆の最後の日には、送り火を焚き精霊送ってゆく精霊送りの行事が行われますが、この時、帰って行く精霊さまにお土産団子を作ります。お土産団子は、六地蔵様用も作り、精霊送りの時一緒に持って行きます。これも、六道のどこかへ帰って行く精霊達への救いをお地蔵さまにお願いしての行事でしょう。

2003/08/16
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