岐阜縣郡上郡八幡町字桜町
小倉寅吉様
拝啓 寒さも追々増して来ました。十一月 日付、及十二月七日付の手紙確に受取りました。長らく他方に居り手紙も早く受取れませんでした。志津子の書方、大変上手に書けてゐました。みさゑのがありましたら送ってください。餅は送っても差支えはありませんが少しでよろしいです。又、送っていただかなくてもよろしいです。それから、昨日、小包を二個、今日は一ヶ送りました。書留です。柿は無ければよろしいです。余り手数をかけますから。
では、今日はこれにて
乱筆乍ら 草々
佐世保局気付
怒和島
小倉藤吉 書
召集先で妹たちを思う17歳の少年の絵はがき
小倉藤吉は八幡高等小学校を卒業後、志願して郡上を出た。
宛名の寅吉は父親のこと。志津子(13歳)やみさゑは妹。
自分へ餅や柿を送ってくれることより、妹の成長のわかる書方を見たいと書き残している。
それが彼の生きる力になったものと思います。
翌年の6月11日、佐世保でB29の爆撃を受け、船が沈み戦死した。18歳だった。
やさしい妹思いの兄の姿が偲ばれる絵はがきです。
裏は志布志湾の風光明媚な写真でした。
岐阜県郡上市八幡町中坪 「万国英霊寺」蔵