水野隆 「詩のサロン」師走連句会 「障子の穴に星あふれ」の巻 (水野隆 捌)  郡上八幡「菊美屋」

 発句  子の破る障子の穴に星あふれ             水野 隆
   2  榾(ほだ)に弾(はじ)けて酒(ささ)のあとさき    古田憲治
   3  蜜と乳(ちち)荒漠の世を求めきて           古田 了
   4  堕落のさまは詩(うた)に記しつ            水野光哉
   5  欠くること怖れもせずや望(もち)の月         清水遥見
   6  もみじとりどり埋ずむ石段                斎藤佳成
 裏 7  夕間暮れ稲束の奥声ひそめ              渡辺多美子
   8  メールの文字を指でなぞりつ                遥見
   9  経(たて)に哀しみ緯(よこ)に歓び織りなして        了
  10  果てなくつづくジグソーパズル                遥見
  11  防人(さきもり)の糧を掠めてゴルフ行(こう)       佳成
  12  隣の芝は今日も青々                     多美子
  13  三日月の繊(ほそ)く珈琲濃き夏ぞ              隆
  14  象牙の塔に居場所無きまま                 光哉
  15  原野はるかトリケラトプス群をなし             佳成
  16  生命(いのち)の樹は天に分かれて           多美子
  17  言霊(ことだま)を孕(はら)みて花は炎(も)えむとす   遥見
  18  土筆(つくし)の生(あ)るる畑の片隅          水野五月
  19  めだか探す川掌(て)の中に透きとほり        新人未知子
  20  千代住みしとふ郡上苅安                 川上朝史
  21  醒めがたき夢をうつつに土佐の城             多美子
  22  膝に憩える君が後れ毛                     了
  23  お揃ひのカップ触れあひ夜を明かす            未知子
  24  ラップランドに橇(そり)の鈴の音                了
  25  柊(ひいらぎ)も凍てる空気に棘(とげ)のばし      憲治
  26  そらす目線で騙す奇術師                  光哉
  27  絡操(からくり)の人形そそと茶を運び          遥見
  28  江戸などいらぬ泣き節の旅                 五月
  29  風渡る棚田棚田の月しづか                 多美子
  30  蝗(いなご)喰らひて往(い)かむ冥土へ         五月
 名残  美辞麗句罵詈雑言(ばりぞうごん)も光る露       遥見
  32  貝殻の票投ず日ざかり                     隆    ここで会場を「たちばなへ」
  33  核廃絶桝形地蔵(ますがたじざう)竝び立つ       憲治
  34  人工飼育すず蟲の春                      未知子
 花の座 瞼裏(まなうら)に過去(すぎこし)の花散り初めて    隆
 挙句  紙風船は宇宙めぐるか                     遥見

            平成19年師走(2007年12月2日 午後1時より)
            岐阜県郡上八幡枡形 「菊美屋」囲炉裏の間