突然の無情の風に春寒し
喪の明けて一人の春を惜しみけり
喪心を深めて庭の若葉雨
春惜の心しみじみ妻憶ふ
在りし日の庭に草引く妻憶ふ
墓洗ふ朝の山気の濃かりけり
喪心の解けざるままに夏に入る
父の日に貰いしシャツの楽しかり
焼芋を妻の笑顔に供へけり
一人居の庭に音無く秋灯
日映えて華やぐ城の冬紅葉
小春日に白亜の天主眩しかり
山日背に大根を引く老夫婦
朴落ち葉掃く人もなき城の径
残照に映え山寺の冬紅葉
八幡ホトトギス会
夜座二一九号より
2007年2月4日 二郎四十九日忌・ちい一周忌
義父・故森山二郎(86)絶唱
2006年2月に妻・ちいを亡くした後の句。自身は同年12月3日寂。