仏はつねにいませども
うつつならぬぞあはれなる
人のおとせぬあかつきに
ほのかに夢にみえたまふ
心の澄むものは
霞 花園
夜半の月 秋の野辺
上下も分かぬ戀の路
岩間を漏りくる瀧の水
君が愛せし綾藺傘
落ちにけり 落ちにけり
加茂川に 川上に
それを求むと尋ぬとせしほどに
明けにけり 明けにけり
さらさらさいけの秋の夜は
遊びせむとや生れけむ
戯れせむとや生れけむ
遊ぶ子どもの聲きけば
わが身さへこそゆるがるれ
烏は見る世に色黒し
鷺は年経れどなほ白し
鴨の頸をば短しとて
継ぐものか
鶴の脚をは長しとて
切るものか
吹く風は
消息をだに付けばやと
思へども
よしなき野辺に
落ちもこそすれ
「梁塵秘抄」
2003年8月21日 おもだか家にて
歌の上手な人が歌を歌ったならば、天井の上の梁の上にたまっていた塵までが飛ぶようになる様、と詩のサロンで水野隆さんが講義。
数奇な人生を歩んだ後白川院(法皇)の編纂。階級の厳しい世の中で身分の低い階級の人の歌う歌。