第14話  ≪山内一豊の妻≫
  母・とも
千代を宿す
  八朔の異変
お千代物語
 
 「たッ、大変です!木越城の兄上が、神路で鉄砲で撃たれました! 赤谷山へ八朔の祝いを届けた帰りでした。」
 急を告げる家臣に、ともは一瞬気を失うばかりだった。
 実弟・東常尭(とうのつねたか)が、家臣に命じて、夫の遠藤盛数の兄・胤縁を殺したというのだ。
 「おのれ、常尭め。ともの実家とて許さぬぞ。」盛数は苅安から粥川・餌取・畑佐に兄の弔い合戦の檄を飛ばした。
 
 ともは父・東常慶の悲痛な顔が目に浮かんだ。 
庭の
ノウゼンカズラの鮮やかな朱を呆然と見つめていた。
  永禄2年(1559)8月1日の暑い日のことだった。
                                                
  ※八朔とは旧暦8月朔日(ついたち)のこと。木越城は大和町にある。
 
                                                 
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※神路は郡上市大和町に、赤谷山は八幡町に、苅安は美並町にある。