第13話 6/1 『倉庫に聳え立つ山』

今回はゲーム屋さんの悩みの一つ、ゲームソフトの在庫についてのお話です。

まずは簡単に、任天堂時代の頃についてお話しておきましょう。
各メーカーは任天堂にROMの生産を依頼し、出来あがったらそれを買い取るという方式でした(一部メーカー例外有)。そしてメーカーは出来あがったROMを減らすため、玩具問屋に押し付けていったのでした。その玩具問屋も取引している小売店に何とか買わせようと押し付けていたのです。
任天堂に生産を依頼すると、ICチップを載せた基盤を作るという製作工程上、1〜2ヶ月はかかったそうです。さらに依頼本数を決定するため、それ以前に玩具問屋は注文数を確認したわけです。つまり、タイトルとメーカーの資料だけを元に決めていたのであり、発注見こみ違いというのが多発したわけです。
毎週新作は仕入れるわけで、最終的に在庫の溢れる小売店は売れ行きの悪い商品を値段を下げて処分をしていきました。

そしてプレイステーションによる改革の時期がやってきました。
CDの量産技術によって、迅速な追加納品が期待されました。さらに小売店と直接取引きを結ぶ形態を取っており、かつての玩具問屋との不当な取引にメーカーも小売店も開放されることが期待されました。今回の焦点である在庫に関しても、少しは改善されるであろうとも。

しかし、である。依然として在庫に悩まされている小売店はきっと多いことだろう。
実はCDという商品は、作るのに時間がかかるのである。私自身もCDパッケージの工場でアルバイトをしたことがあり、隙間から垣間見たことが有りますが、CDの製造は一瞬でした。そう、ディスク単体であるならば。しかしパッケージするにはジャケット等の付属物が必要であり、その印刷物の発行には、意外と時間がかかるのです。従って、急な売れ行きに対抗できるだけのスピードが無いのです。
加えてゲームというのはファミコン・スーパーファミコンの頃と変わらず発売後1ヶ月間が売上の勝負であり、その間に売り切れを起こして機会損失をしたら売上に響くこととなります。
これらのことにより、各小売店は実質の売上予想量よりも多く仕入れなくてはいけなくなります。
さらには、市場投入タイトル数の多さも一因に挙げられるでしょう。今となっては1月に50タイトルを下回ることは珍しくないだろうか。ある程度の量を仕入れておくので、その量が蓄積すると・・・、である。
昔より少なくはなったものの、依然として特価品による在庫処分は続いている。

こうして、小売店の倉庫には売れ残った商品の山が築かれ続けているのです。